【R2-No.10】研究紹介:土石流の高精度数値シミュレーション技術の開発と凸型の鋼製フレームを持つ新しい構造の砂防堰堤の効果検討
従来、土石流のシミュレーションでは、粒子の集合を連続体と仮定したモデルが用いられてきました。しかし、この方法では、巨石などの大粒子と小粒子の間、または土砂と流木の間で生じる分級現象を正しく説明できず、また、土石流と鋼製フレーム構造の砂防堰堤との相互作用も推定できません。これに対し私たちは、異なる形と大きさの個々の石の運動と、変形・破壊する流木、およびその周りの水の三次元運動を高精度に解く数値解析技術を開発しました。
図-1の左側は、従来型の透過型砂防堰堤、右側は私たちが提案した上流側に凸型をした鋼製フレームを持つ新しいタイプの砂防堰堤です。開発した新しい数値解析技術を用いることで、このような複雑な構造の砂防堰堤の効果検討が数値シミュレーションで実施できるようになりました。解析の結果、凸型の鋼製フレームは従来型の透過型砂防堰堤と比べて土砂を約30%も多く捕捉できることが推定され、その有効性が示されました。今後、新たに開発した数値解析技術の活用によって、土石流対策のさらなる発展が期待されます。

工学科 社会基盤デザインコース・准教授 福田 朝生