【R3-No.16】研究紹介:磁石をもちいた新しい高機能・高効率アーク溶接法の開発

 皆さんの身の回りにあるすべての車や多くの構造物(ビル,橋梁,タンクetc.)等には金属同士を繋げる接合技術が使われています.その接合技術の中でも,アークを用いた溶融溶接は施工の利便性等から工業的に最も利用されている接合法です.ところで溶接効率を向上させるために入力を大きくすると,重力の影響により溶融した金属が垂れ下がり,多くの欠陥が発生します.特に構造物等の溶接において必要とされる立向姿勢(垂直方向)の溶接では,重力の影響が顕著で有り,最も難しい姿勢の溶接と言われています.そのためこれらの溶接は熟練の溶接工に技術に大きく依存しています.しかしながら,現在,熟練溶接工の高年齢化が深刻であり,今後の我々の生活を維持するためには,高度な技術をもつ溶接工の人材育成・確保が大きな問題となっています.

 我々はこれらの課題を解決するために磁石をもちいた新しいアーク溶接法の研究を行っています.アーク(プラズマ)とは,イオンと電子から構成される高温の気体で,固体,液体,気体に次ぐ第4の物質と言われており,気体のように見えるが,電流が流れるのが大きな違いです.アークには電流が流れているため,磁石を近づけるとフレミングの左手の法則にしたがい,アーク中に電磁力が発生します.また溶融した金属中にも電流が流れているため電磁力が発生します.我々はこれらの電磁力を用いて,重力および磁気吹きに起因する溶接欠陥を抑制するとともに,誰でも比較的簡単に溶接ができる新しい溶接法の開発を目指しています.

新しく開発したトーチ(プロトタイプ)

エネルギー環境工学コース・准教授 松田昇一

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