【R3-No.6】研究紹介:酸化モリブデンとマグネシウムの化学反応により生成した酸化マグネシウムを陰極バッファとして用いる有機薄膜太陽電池の作製と評価

 有機薄膜太陽電池 (OPV) は,次世代の太陽電池として注目され,活発な研究が行われています。OPVは有機薄膜が二つの電極で挟まれた構造を有しており (図1),性能向上のためには,優れた有機半導体の開発のみならず,有機層 / 電極界面を制御するバッファ材料の開発が重要な課題です。これまでに報告された陰極バッファ材料はいくつかありますが,それらのなかで,酸化チタン,酸化亜鉛,酸化マグネシウム (MgO) などの金属酸化物は,広く用いられている材料系の一つです。
 われわれは,MoO3と,真空蒸着したMgとの化学反応による新しいMgO膜作製法を提示するとともに,生成したMgO膜をOPV用の陰極バッファとして用いることにより,曲線因子 (FF) が向上することに基づいて電力変換効率が向上すること (図2),ならびに,このMgO膜が,金を陰極とする半透明OPV用陰極バッファとしても機能することを明らかにしました (図3)。


図1 一般的なOPVの構造
図2 OPVの特性におよぼすMoO3 / Mg 陰極バッファーの効果
図3 MoO3 / Mg / Au陰極を用いる半透明OPVの写真 (発電部分を破線で示しています)

工学科電子情報通信コース・准教授 景山 弘

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